OREAD Diary January 1〜January 31, 2006
January 28, Saturday 2006
一月最後の飛び入りライブ。最初にやってきたのは山岸豊さんとジョン・サンダーズ&ステファニー・ペドレッチ夫妻。まずぼくがサウンドチェックを兼ね、ジョンとステファニーにこの歌ができた経緯と、一昨日が彼の命日だったことを手短に話し、「カムサハムニダ、イ・スヒョン」を歌う。ジョンにサックスで入ってもらう。このあとジョンはサックスで大活躍。
トップバッターは山岸さん。「もうすぐもういまにも」「遠距離恋愛」「時間」「次の場所へ」の4曲。いずれも彼の新しいCD『歌はかけがえのないもののひとつ』に収録されている曲。「時間」は初めて聞いた気がする。いずれの曲にもジョンのサックスが入る。CDでは半分の曲にジョンのサックスが入っているとのこと。
次にジョンにソロをお願いする。Around Midnight と The Girl from Ipanemaの2曲。彼がソロで演奏するのを聞くのは初めて。彼自身ソロで演奏することはあまりないらしい。素晴らしかった。特に2曲目の「イパネマの娘」はよく知っているメロディで楽しめた。
そのままジョンにステージに残ってもらい、藤森和弘さんの一曲目「しゃぼん玉」に入ってもらう。あとの二曲は藤森さん一人で「シリアス」と「東京青春残酷物語」。今夜のギターはマーチンのジョニー・キャッシュ・モデルとか。そうか最近彼はいつもこのギターだった。ジョニー・キャッシュといえば黒。Man
in Black。気がつかなかった。
続いて藤原和義さん。藤原さんも自らジョンに頼み、最初の2曲「シェナンドー」と「テネシー・ワルツ」を一緒に。そして3曲目は一人で「籠の鳥」。「会いたさ見たさにこわさを忘れ、暗い夜道をただ一人」で始まる例の曲。小さな子どもの頃お母さんが歌うのをよく聞いたとのこと。そういえばぼくの母も「ゴンドラの唄」とともにこの歌を口ずさんでいた。
次にいつの間にか2番テーブルにすわっていた赤羽真理さん。定番「千両梨の実」。今晩は、歌詞に「キリスト」という固有名詞が入っていた。いつもはなかったような気がする。ギターは藤原さんのテイラー。この小ぶりのギターが赤羽さんによく似合う。
次にステファニーのフルート。写真からもわかるように、フルートを吹くときの彼女の姿勢は背筋が伸び、実にきれいだ。Meditation from Thais (Massenet)と Senenade (Woodall) の2曲。オーリアッドの空間がフルートの繊細な音色で満たされる。ここで前半終了。
10分の休憩後、後半。山岸さん「雪降る夜に小布施で」「歌はかけがえのないもののひとつ」。ジョンがサックスで入る。続いてジョンが
Stormy Weather と The Girl from Ipanema。このときまでに、前半のジョンの演奏を聞かなかったお客さんがたくさん来ていた。聞きなれた「イパネマの娘」を再度演奏してくれてよかった。藤森さん、一曲目は前半ジョンが入って緊張したが楽しかったとのことで、彼から頼んで一緒に「上を向いて歩こう」。そして一人で、藤原さんのリクエスト曲「Hold
Your Last Chance」。
続いて赤羽真理さん、「驚くばかりの」。ステファニー、Orphee (Gluck)とHumoresque
(Dvorak)。二曲目はドヴォルザークの「ユーモレスク」。ここでぼくが「こおろぎが歌うように」とイ君に捧げる「千の風」。一曲目は藤原さんのリクエスト。
最後に藤原さん、「オーリアッド(妖精)」「カントリー・ワルツ」「バラライカ」の3曲。藤原さんはオーリアッドへ入ってきたときから今日はとても疲れて見えた。前半は声も出しずらそうだった。しかし後半は熱の入った演奏。最後の「バラライカ」は今まで聞いたことがないほどの朗々とした歌声。いつにも増して説得力があった。前半終了間際から、藤原さんのファンがたくさんきていたが、きっと同じ思いだっただろう。その後しばし歓談。藤原さんのCDタイトルは『カントリー・ワルツ』になるようだ。
January 27, Friday 2006
終日ジョニー・キャッシュ。午後は昼過ぎ送られてきた初稿の校正。夕方オーリアッドに入る前、電話で修正箇所を連絡する。正確を期したつもりでも、印刷されたものを見ると、勘違いや間違いがあるものだ。
石崎信郎さんにお願いして、トークの部分をカットした第12回年末ライブのCD-Rを送ってもらった。今夜それを聞いたが、同じトークを繰り返し聞くのもうっとうしいが、まったくないのもライブ盤としては少々物足りない。この2枚組の中から曲を選んで1枚に収めるのもいいかもしれない。
昨夜は「カムサハムニダ、イ・スヒョン」を韓国語で歌ったが、今夜は日本語ヴァージョンを歌う。
ジョニー・キャッシュを訳していると、アメリカには大きな事故や事件を歌った古い歌が多いことに気づく。John
Henry もそうだし、The Wreck of the Old 97 もそうだ。
後者は、1903年9月にヴァージニア州で起きた鉄道事故を歌にしたもの。運転士が、「遅れているので急げ、時間正確にノースカロライナのスペンサーに着くように」との指令を受け、猛スピードで急坂を走り下り、脱線転覆し、運転士を含め11名が亡くなった事故である。
11時過ぎ、外に出る。地面にはうっすらと雪が積もっていた。家にもどると家のまわりにはもっと雪があった。大雪にならなければいいが。
January 26, Thursday 2006
前半英語教室。9時過ぎ階下へ。At Folsom Prison の対訳はほぼ終了しているが、キャッシュの語りの部分で立ち往生。
閉店前、誰もいない客席に向かって「カムサハムニダ、イ・スヒョン」を歌う。韓国語で。本当に久しぶりに韓国語で歌ったが、意外と覚えていて驚いた。もちろん、歌詞カードを見ながら。一番とコーラスは歌詞を見なくても歌える。ヨン先生の特訓のおかげである。
カームサハムニダ、イー・スヒョン
ターンシネ、タージョンハムグワー、ヨーンギエー
ウリヌン・ターンシヌ、イッチアーナヨー
カームサハムニダ、イー・スヒョン
今でもこの気持ちに変わりはない。2001年1月26日から5年が経った。イ君の死はぼくの人生に大きな影響を与えた。彼の死がなければオーリアッドは再開されなかったかもしれない。また、現在の日本の韓国ブームに対しても彼は大きな役割を果たした。日本人の韓国に対するイメージはあのときを境に大きく変わった。
January 25, Wednesday 2006
久々のオーリアッド。開店後まもなくして、イギリスの障害者が共同で生活し働く農場施設でヴォランティアとして働きたいというK君が入ってくる。インターネットで申し込みをし、適切であるみなされたら正式な申し込み用紙が送られてくるとのこと。最初の申し込みのメールの英訳を頼まれる。
調べてみて驚いたことは、このような農業施設が全世界にあること。K君は将来日本でそのような農場を始めたいと考えている。
ジョニー・キャッシュの At Folsom Prison の対訳中。刑務所でコンサートを行い、刑務所や死刑にまつわる歌を歌うというのは凄い勇気だ。聴衆の熱狂的な反応にも驚かされる。
久々に The Weavers Greatest Hits を聞く。60年代のアメリカのフォークリバイバルは彼らから始まったといっても過言ではない。Guantanamera,
Aunt Rhodie, Gotta Travel On など、懐かしい歌がいくつもあった。
11時過ぎ、家に戻る。月はなく、オリオン座が西の山に傾いていた。満天の星空。
January 21, Saturday 2006
サウンドチェックを兼ね「テネシー・ワルツ」を歌っているところへ藤原和義さん。彼が入ってくるまで安定したリズムで歌っていたのに、彼が入ってきた途端リズムが崩れ始めた。喝!まだまだ修行が足りない。その後、お客さんがくるまで「パーティーは終ったよ」と「流転のうた」。
しばらくして、「赤羽さんの歌を聞きにきました」という5人のグループ。「今日は聞くだけにさせてください」と言って入ってきたFさん家族もいて、徐々にお客さんが増えてきた。ここで藤原さんに歌ってもらうことに。今日は歌詞を書いたノートを忘れてきたとのことで、歌詞をみないでも歌える歌をと言いながら、「シェナンドー」「カナダの木こり」「テネシー・ワルツ」「この想い」の4曲。2曲目は女性ヴォーカルと掛け合いで歌うヴァージョンと一人で歌うヴァージョンがあるとのことだが、今夜は当然後者。藤原さんの「シェナンドー」は先週初めて聞いた。今日は先週にも増して説得力があった。この歌を歌うまえに、ハーモニカを吹いたが、その音色がいい。
次に久々登場は、田中創さん。You've Got to Hide Your Love Away, The End
of the World, Drowned in My Own Tears の3曲。2曲目は最近歌い始めたとのことで、最初少し歌いずらそうだったが、最後は見事に決めた。
なぜ太陽はまだ輝いているの
なぜ海はまだ岸に打ち寄せているの
世界が終ったと知らないのだろうか
あなたがもう私を愛してくれないのだから
続いて春日淳也さん。リードギターに田中さん。「自転車に乗って」「生活の柄」、This
Time、「12月の雨」の4曲。3曲目はLos Lobosの曲。
日々はどうしてこんなに速く過ぎ去るのだろう
時間は永遠に続いているのに
ゆっくり進むことを学んでくれたらいいのに
そうしたら時間は少なくとも分かってくれるだろう
月曜日、火曜日が過ぎ、水曜日、木曜日になり
それからすぐに土曜日になり
日曜日がきたときはもう手遅れ
今この時でなければならない、と
田中さんの軽快なリードギターが心地よい。
赤羽真理さんが今日来てくれるかどうか分からなかった。彼の歌を聞きたいという人たちがきたので電話をしようか迷ったが、急に電話で呼び出すのも失礼と思い、電話をしなかった。おそらくいつものように8時過ぎにそっと現れるだろうという期待もあった。その通りになった。しかし、お願いすると「今日は聞くだけに」とのこと。そこを無理してお願いして「千両梨の実」。もう一曲「アメージング・グレース」をとの声がお客さんからかかったが、「今日はこれだけで」とステージを下りる。
ここから後半。ぼくが「テネシー・ワルツ」と「千の風」の2曲。田中さんが
Sweet Home Chicago, Willingの2曲。後者は Little Feat の Lowell George
の曲。まだ若いのに田中さんは、どうしてこういった渋い曲を知ってるのだろう。
最後は藤原和義さん。一曲目、「オーリアッド(妖精)」。そのあと、「木枯らしの街を」と「足を止めて」。一曲目のあと彼は「CDをつくることになりました」と話し始めた。実は木曜日の日記に「まだ公表できない」と書いたのはこのこと。彼が話した以上、もう書いてもいいだろう。off
note の協力を得て、2月後半レコーディング、3月末までには出来上がる予定。楽しみだ。出来上がり次第、発売記念コンサートをオーリアッドで開きたいと思っている。
その後、しばし歓談。イギリスの障害者施設へボランティアとして働きに行きたいという若者から相談を受ける。彼は北海道酪農学園大学の出身。今伊那市の専門学校で木工を習っていて、農業と木工の分野でこの施設に貢献したいとのこと。「大いにやるべし」と、ぼくのできる範囲で協力を約束する。
January 20, Friday 2006
夕方、スイミングへ。大柄なカナダ人と更衣室で出会う。「こんにちは」と話しかけてきたので、日本語で応対したら、あまり通じず、英語で話すことに。コーエンとディランの話題で盛り上がる。オーリアッドの話をすると、そんな場所を探していたと言う。来るなら、来週の土曜日がいい、シカゴのサックス奏者が来ると話しておいた。
今夜は新年になってから、ウイークデイとしては一番忙しい日。と言っても、他のお店の人が見たら、暇だったということになるかもしれない。家に帰ったのは結局一時過ぎ。
カウンターの中でどう訳していいかわからないところを頭の中で反芻していたら、いいアイディアが浮かんだ。比喩的表現を訳すのは難しい。直訳しても意味が通じないことが多い。
この週末はセンター入試。関東でも雪が降るおそれがあるとのこと。センター入試の日にはよく雪が降る。大雪にならなければいいが。今年のセンター入試から英語にリスニングが入る。模擬試験のCDを入手して聞いてみた。同じ問題が2度繰り返されるという点では、TOEICより楽だが、問題そのものはそれほど簡単ではない。ということはリスニングの力のある受験生にとっては有利ということになる。数日前にも、ぼくの英語の本についての問い合わせがあった。なんとか今年は形にしたいものだ。
January 19, Thursday 2006
終日翻訳。夕方、オーリアッドへ入る前にスイミングへ。運動不足は歴然で、身体を動かしサウナに入ったら気持ちがいい。もう少し頻繁に行けたらいいのだが。
前半英語教室。9時過ぎオーリアッドに入ると、藤原和義さんが一番テーブルに。相談したいことがあるというので何事かと思ったら、とてもいい話。まだ公表できないが、藤原和義ファンには朗報である。
藤原さんが北海道出身だったことを思い出し、阿知波一道さんの『そらは飛ぶ鳥をえらばない』を久しぶりにかける。阿知波さんの深くて伸びのある声が、彼のギター、山北さんのパーカッションと小気味よくブレンドし、オーリアッドの空間を満たす。「時間という名の列車に乗って」「踊ってよギリヤークさん」「パトナの少年」「PEACE
TO YOU」「そらは飛ぶ鳥をえらばない」を藤原さんに聞いてもらう。これらはすべてぼくの好きな歌。
一曲目が終ったとき、「この人いいですね」と藤原さん。久しぶりに聞いて、ぼくも改めてその思いを強くした。このCD-RはそのままCDにしても十分通用するクオリティをもっている。
歌に救いを求めてみても
何も変えられはしなかったけれど
捨てきれぬ悲しみや苦しみを
歌うことで乗り越えてきたような気がする
担えぬほどの大きなものを
出会いの中に手渡されている
燃えるような思いはなくなったけれど
歌がぼくをつかまえて放さないかぎり
自らの悲しみにとらわれて
大事なものを見失ってないかい
あなたが平和でありますように
願いも人もすでにそこにある
一部聞き取れなかったところもあるが、「PEACE TO YOU」の後半の3ヴァースである。「歌がぼくをつかまえて放さない限り」という言葉にどきっとした。本当にそうだと思う。歌はつかまえようとしてもつかまえられない。
ぼくはあと何年生きるかわからない。今しみじみと思っている。残された人生、歌につかまえられた人たちと出会いたいと。いや、ぼくはすでにそのような人たちと出会っている。その出会いの中で「担えぬほどの大きなものを手渡されている」。
January 18, Wednesday 2006
午後2時より、辰野町の料飲食店組合の新年会。「すし辰」にて。さすが料飲食店組合の新年会。料理が豪華である。蜂の子、サザエのつぼ焼き、ウニ&イクラ
with とろろ、生牡蠣など、普段食べなれていないものも美味しくいただいた。蜂の子を食べたのはいつ以来か。さすがお寿司屋さん、お造りが新鮮で実に美味しかった。
ときどき珍しいCDをもってきてくれるYさんが、今晩はホセ・カレーラス(Jose Carreras)というイタリアのオペラ歌手が世界の歌をそれぞれの国の言葉で歌っているCDをもってきてくれた。フランス語で「愛の讃歌」、英語で「(ここに降り立ち給え(クンバイヤ)」、日本語で「川のながれのように」、ロシア語で「モスクワの夜は更けて」、
韓国語で「愛をこめて」など。韓国語の歌はメロディがきれいだった。「クンバイヤ」は昔よくフーテナニーで歌ったもの。最近は歌ったことがないが、たまには歌ってもいいかもしれない。オーリアッドで英語の歌を歌うフーテナニーをやってもいい。
堀金村、否、安曇野市の山岸豊さんより電話。1月28日(土)の飛び入りライブに、ジョン・サンダーズ、ステファニー・ペドレッチ夫妻とともに参加したいとのこと。彼らが前回きたのは昨年の12月の初めだった。ジョンのサックス、ステファニーのフルートは一聴に値する。
今晩は寒い。11時過ぎ家に戻ると、玄関先の温度計が−7℃をさしていた。空には半月と無数の星。
January 17, Tuesday 2006
先週のオーリアッド飛び入りライブで歌ってくれた山梨県高根町のブルーズマン、スリーピー中村こと中村進さんのライブが伊那市のBASEである。ゲストは山田守人さん。
スリーピー中村ライブ
日時:1月27日(金)2006 午後8時より
会場:JAZZ-CAFE BASE (tel:0265-73-1213)
チャージ: 1000円
スペシャルゲスト:山田守人
Janurary 14, Saturday 2006
ジミー矢島、スリーピー中村を迎えての今年2度目の飛び入りライブ。素晴らしい夜になった。
開店後、誰もいない客席に向かって、サウンドチェックを兼ね「テネシー・ワルツ」「パーティーは終ったよ」などを歌っているところへ、山田守人さん。来るという連絡がなかったので、入ってきたとき一瞬誰だかわからなかった。長髪(一部短い[ない]ところもあった)を惜しげもなく切り落とし、丸刈りだ。少年のような山田守人がそこにいる。山田さんがエレキギターのアンプをセッティングしているので、リードをつけてもらうことにする。
Bird on the Wire と Blowin' in the Wind を山田さんのギターをバックに歌う。今晩その後山田さんはギターで大活躍することに。
ぼくと山田さんのセッションを聞いていた堀川博司さんも山田さんにギターをお願いして歌い始める。「されどわたしの人生は」「どうしてこんなに悲しいんだろう」「もう引き返せない」。最初にオーリアッドで歌った頃に比べて格段に上手くなった。欲を言えば、オリジナルが一曲ほしい。
続いて一年半ぶりに登場のスリーピー中村こと中村進さん。あご髭をたくわえ、風格さえ滲み出ている。まず、ケイタイ電話を揶揄した新曲「電磁波ブルーズ」。軽快なギター、渋い歌声は健在。続いて「風が吹いてきたよ」と犬年にちなんで「犬」の歌。
続いてジミー矢島さん。彼の名前は以前から聞いていたが、お会いするのも演奏を聞くのも初めて。ドアを開けて入ってきたときの大柄で飾らない朴訥な感じに好感を抱く。一曲目「スパー・バーバーショップ」。つづいて、「たそがれマッチョマン」「ミスティー通り」。歌の印象は、彼が店に入ってきたときに感じた第一印象に近い。ユーモアのあるほのぼのとした歌詞に思わずニンマリ。ギターが凄い。
続いて藤原和義さん。今日はちょっと入りが遅かった。息子さんの入試に付き添って富山県まで車で行ってきたとのこと。雪の中の運転で疲れているはずなのに、本当にありがたい。一曲目、先週も歌った彼のオリジナル演歌「花の雨情」。つづいて、彼の訳詞で「オー、シェナンドー」。ディランが歌ったこの歌を訳したことがある。三曲目「この想い」。数日前「藤原サンの哀愁のあるセクシーな声にハマりソウでチトやばいです」というメールが届いた。そうなんだ、彼の歌が人を魅了するのは声が「セクシー」だからだと納得。
続いてドクターふあ。「石を煮て」「マザー」「口癖」。二曲目「マザー」はレノンの曲をふあさんが訳したもの。訳したというよりも創作したといったほうがいいほどに内容が敷衍されている。まさに精神科医の面目躍如といったところ。会場はシーンと静まり返り、誰もがこの歌の歌詞に集中していることがわかる。
大月高志さんは、今夜は、ギターのインストラメンタル。今日オーリアッドに集まった人たちが若かりしころ聞いたであろうオールナイトニッポンのテーマ曲
Sweet Bitter Samba。多くの人が、夜中にラジオに耳をあてて聞いていた青春時代を思い出したに違いない。
ここで山田守人さんと斉藤勇さんの演奏。リードギターはジミー矢島さん。「デイラ・ブルーズ」「レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール」「ドリーム・ボート」の3曲。弾き語りのときのギターにもまして、このとき本当にジミー矢島さんのギターの凄さに驚かされる。技術を誇示することもなく、大きな音を出すのでもなく、安定したリフの見事な演奏。
続いてボブ鈴木登場。「雨のブルーズ」「あの娘の唇の・・」「バイ・バイ・ベイビー」の3曲。最初の2曲にジミー矢島のリードギター、3曲目に山田守人。ベース斉藤勇。凄い演奏。3曲目、斉藤さんのベースがフィーチャーされてよかった。ボブの気配りに感心する。一曲目は豊田勇造の歌。豊田君から4月にオーリアッドに歌いにきたいと連絡が入っている。
ここからセカンド・ラウンド。ジミー矢島、「蕎麦打ちブギ」「八ヶ岳へ行こう」。矢島さんが以前東京で蕎麦職人をしていて、今は八ヶ岳山麓に住んでいるとは聞いていたが、その彼の人生のいくつかの局面を歌った楽しい2曲。山田さんのリードギターが冴える。中村進、
I Shall Be Released とブルーズ「天国行きの汽車」の2曲。バックに山田さんと斉藤さん。ふあさんと藤原さんに最後一曲づつお願いする。ふあさん、できたばかりの新曲「ちっちゃな子どもとドシンとブカンとドボン」。自分の中にいる、あるいは誰の中にもいる、ちっちゃな子どもについての歌。藤原さん、ご存知「テネシー・ワルツ」。まさにセクシーな声。
これで本日の飛び入りライブすべて終了。その後しばし歓談。大雨にもかかわらず歌いにきてくださった歌い手の人たち、それにもまして聞きにきてくださった方々に感謝。オーリアッドを続けていけるのは今日のような日があるから。最後に残った4人で記念撮影。ここに中山昭さんがいたら言うことなし。
January 13, Friday 2006
13日の金曜日。こんなことを気にした頃もあった。
寒いと機材の調子が悪くなるのか、今日は最初のうちCDプレーヤーの調子が悪かった。レンズの掃除をしばらくしてないと思い、レンズ掃除用のディスクをかける。少しよくなったような気がする。
オーリアッドにくる途中通り過ぎた町民会館にたくさんの車。コンサートでもあるのかなと思っていたら、9時近く、「とてもいいコンサートでした」といいながら入ってきたご夫妻がいた。「ベスト・オブ・クラシック」というNHKFMの番組の公開コンサートだったらしい。横山幸男という著名なピアニストの演奏で、「久しぶりに素晴らしい演奏を堪能しました」とのこと。
プログラムを見せてもらった。一曲目が「主よ、人の望みの喜びよ」だった。すぐに根橋唱ニさんのことを思った。彼が健在だったら、彼もこのコンサートに行ったことだろう。
11時過ぎ、外に出る。雨が降っていた。雪にならなければいいが。
January 12, Thursday 2006
前半英語教室。9時過ぎに階下に下りていくと、ジブラーンの会の人たちが帰り支度をしているところ。今夜は、最終章「別れ」を読んだとのこと。しかし全部読めなかったので、来月その続きを読むとのこと。
彼らの一人がこの本を最初に読んだのは20年前のことだったと言う。ぼくはまだ40になったかならないか。20年後の今、彼女たちはあの頃とほとんど変わっていない。若々しい。ぼくだけが年をとってしまったかのようだ。
ボブ鈴木からファックスが入った。今度の飛び入りライブに、大雪が降らない限り、ジミー矢島、スリーピー中村の二人のブルーズマンが歌いにきてくれるとのこと。中村さんが最後に来たのは、もう一年以上も前のこと。矢島さんにお会いするのはこれが初めて。楽しみだ。
January 11, Wednesday 2006
久々のオーリアッド。連日の寒さが今日は少し緩んだ。それでも日が沈むとかなり冷えてきた。
Johnny Cash Sings The Ballads of TRUE WEST というCDを聞いているところへ、Yさんが入ってくる。手にはなにやらCDをもっている。サントリーのウーロン茶のコマーシャルに使われた曲を中国のミュージシャンが演奏し中国語で歌っているCDだという。早速かけさせてもらう。
やさしい音色の楽器と中国語の歌うような響きがブレンドされて心地よい。何曲目かに、すてきなメロディが流れてきた。ワルツである。思い出した。パティ・ペイジが歌う「チェインジング・パートナーズ」だ。昔、この歌と「テネシー・ワルツ」の入ったCDをよく聞いたもの。最近そのCDが見当たらない。
ジョニー・キャッシュの歌を聞いたり訳したりしていると、ネイティヴ・アメリカンの歴史について大いに勉強になる。そしてまたキャッシュの偉大さがわかる。ディランがなぜ彼に敬意を表していたかがわかる。
January 7, Saturday 2006
2006年最初の飛び入りライブ。
まず最初にぼくが歌うことに。久々にお見えになったIさんに「何を歌いましょうか」と聞くと、「ボブ・ディランと<千の風>」とのこと。ひょっとしたらIさんは「風に吹かれて」を希望したのかもしれないと後で思ったが、Mr.
Tambourine Man を歌う。そのあと「千の風」。 Mr. Tambourine Man の最後のヴァースの最後の一行、Let
me forget about today until tomorrow は、ぼくがディランにのめりこむきっかけになった一行。「千の風」はキーを一音下げてAで歌ってみた。歌いやすい。
続いて藤原和義さん。一曲目は『瓶の中の球体』から「今日は帰れない」。そして「暗い夜」「この想い」「小さなぐみの木」。「この想い」は
The Last Thing on My Mind の日本語ヴァージョン。原曲の訳というよりも新たな創作といったほうがいい。
夏の朝露のように
消えてしまった
輝く光のなかに
君だけがいない
さよならも言わないで
行ってしまうなんて
風よ伝えてよ、愛していると
オー、最後のこの想い
この歌も「テネシー・ワルツ」同様、ぼくのレパートリーに加えたい。藤原さんの手にかかるとすべての歌が輝きだす。原曲よりも素敵に思える。不思議だ。
次に駒ヶ根の彦音さん。メールで今日はオカリナの演奏だけにしたいとの連絡が入っていた。前半の曲は「浜千鳥」とオリジナルの「鳥鳴く小道」「雨けぶる森」「夕陽」。MDに録音した音源との合奏で楽しめた。現在、認知症予防・治療のためのDVD用に演奏を依頼されているとのこと。懐かしいメロディとオカリナの優しい音色は音楽療法にうってつけかも。
次に赤羽真理さんに歌ってもらおうと思ったら、コーヒーが出たばかり。彼がコーヒーを飲み終んでいる間にぼくが一曲。「テネシー・ワルツ」。昨日石崎さんからマンダラ2での年末ライブの音源が届いた。前半だけしか聞いてないが、心配していた「テネシー・ワルツ」は悪くなかった。
赤羽真理さんは「年はあらたまりましたが、新曲はまだできていません」といって歌いだす。「ホーボーズ・ララバイ」「旅立ちの時」、そしてご存知「千両梨の実」。「<千両梨の実>につづく新曲を」とぼくがいい過ぎたかもしれないと反省。ぼく自身なかなか新曲ができない。歌ができるときは不思議なもの。何の苦労もなしにできてしまう。しかし、また、「さあ歌を書くぞ」と覚悟を決めて書き始めなければいけないときもある。今年は新曲をせめて一曲は書きたいもの。
ここで藤原さんにセカンド・ラウンドをお願いする。まず、おなじみの「テネシー・ワルツ」「カントリー・ワルツ」の2曲。3曲目は「花の雨情」。演歌である。藤原さんが演歌を歌うのを初めて聞いた。この歌の前に藤原さんが「最初のギター教則本は古賀正男の本だった」と語ったので、てっきり古賀メロディーかと思ったら、藤原さんのオリジナルだという。だんだんと藤原さんの魅力の源泉が解明されてきた。ファースト・ラウンドで歌ったとき、彼は「日本のフォスター」になりたいと思ったことがあるとぼそりと言った。ロシア民謡、古賀正男、それにフォスター。4曲目もオリジナルで「微笑みを消さないで」。
再び彦音さん。「雨と水と大地」「鶴」「カレヤラ」の3曲。ファースト・ラウンドにもまして素晴らしい演奏。最初の2曲はオリジナル。「鶴」では、抜けるような青空に鶴の鳴き声がこだました。3曲目はオカリナの大御所宗次郎の曲とのこと。きれいなメロディー。
彦音さんのあと、大月高志さんが「カノン」を演奏。久々に聞く「カノン」はいつにもまして落ち着いた演奏。素晴らしかった。2月に結婚する親友のためにこの曲を弾くことになっているとか。
最後に藤原さんに「バラライカ」をお願いする。しみじみとした歌声がオーリアッドの空間を満たす。その後しばし歓談。11時閉店。閉店間際になってようやく部屋が暖かくなった。
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今年のオーリアッドの飛び入りライブには、歌い手のみならず、聞きに来てくれる人が増えてほしいと思っている。聞くところによると、多くのライブハウスが危機的な状況を迎えているらしい。お客が入らないのである。オーリアッドだけではないらしい。
ひがしの君によればよく知られたシンガーのライブでも状況は変わらないという。ライブハウスといってもいろいろあるから一口には言えないだろうが、彼はそれは音楽を大事にしてこなかったからだという。飲食が主であったり、歌い手だけで盛り上がったり、自分が歌ってしまえば、他の人の歌を聞こうとしなかったり。
それだけではない。一定の年齢を過ぎると音楽を聞きに行ったり、CDを買ったりすることが少なくなるという文化的な問題もある。テレビに出ている有名人だけに群がるという群集心理もある。
オーリアッドで歌う人には有名な歌い手はいない。しかし、テレビに出て歌っている人たちよりも、個人的意見ではあるが、はるかにいい歌を歌っている人たちがいる。はるかに上手い歌い手がいる。上手い下手を超えた味のある歌い手もいる。そのような歌い手たちを、聞きにきてくれるお客さんが増えてほしいと思っている。また、他の歌い手やお客さんを大事にする歌い手が増えてほしいとも思っている。言うまでもなく、とにかく数が増えればいいという問題ではない。
オーリアッドは、一人でやってきたお客さんが、しばしの間、コーヒーを飲みながら、ゆっくりと音楽を楽しむことのできる空間でありたい。
January 6, Friday 2006
今日も寒い一日。大雪のため死者が全国で53人と報じられている。本当に気の毒だ。終日翻訳。午後遅くスイミングへ、その後、オーリアッド。