鏡 割るべし
by ななおさかき
朝早く シャワーの後
うっかり 鏡の前に立つ
胡麻塩頭 白いひげ 皺ふかく
なんと うらぶれた男よ
俺じゃない 断じて俺じゃない
この大地 このいのち
海にすなどり
星たちと 砂漠に眠り
森あれば 仮小屋むすび
古く ゆかしい農法にたがやし
コヨーテと共に歌い
核戦争止めよと歌い
疲れを知らぬこの俺 ただ今17歳
なんと 頼もしい若もの
十字に脚くみ ひっそり座る
もの思い やがて消え
声ひとつ いま忍びよる
“この命 老いを知らず
この大地 すこやかなれと
鏡 割るべし”
1981年10月
キャンベラ